昨年(2023年)、裁判員候補者に選ばれて裁判員選任手続きで裁判所まで行きましたが、残念ながら落選しました。
時効になったので、裁判員選任手続きの流れや、自分で裁判員制度についていろいろ調べて考えたことなどを書いておきます。
自分も最初は裁判員に選ばれるのは嫌だと思ってましたが、裁判員制度について調べていくうちに裁判員をやってみたいと思うようになりました。裁判員候補に選ばれて嫌だなと考えている方は読んでみると、もしかするとやってみたくなるかもしれません。
全体の流れ
ざっくりですが自分の場合は以下のような流れでした。
最初に「裁判員候補者名簿への記載のお知らせ」が来てから、すっかり忘れてた頃に「裁判員選任手続期日のお知らせ」が来のでだいぶ焦りました。笑
- (2022年11月) 最高裁判所から「裁判員候補者名簿への記載のお知らせ」が届く。
⇒ 期間は2023年1月1日~2023年12月31日まで - (2023年某月) 横浜地方裁判所より「裁判員選任手続期日のお知らせ」が届く。
⇒ 選任手続日は約1.5ヶ月後 - (2023年某月) 選任手続日に横浜地方裁判所に行くも、残念ながら落選。
裁判員候補者名簿への記載のお知らせ
ある日突然、最高裁判所から封筒が送られてきました!
封筒の表には「大切なお知らせです」くらいしか書いておらず、『何か悪いことした!?』とドキドキしながら開けて中を見ると「裁判員候補者名簿に記載された方々へ」とのこと。。
まさか自分に裁判員の話が来るとは思ってもみなかったですが『裁判員を経験できたらブログのネタになるのでいいかも。』というのが最初に思ったことでした。笑
この時点では裁判員についての知識がほとんど無かったので『裁判員で土日が潰れると面倒だな』くらいしか考えてませんでした。(実際は土日はありません)
ただ、この頃から殺人事件などのニュースを見ると『これは裁判員裁判なんだろうか』『もし自分が裁判員でこんな事件だと死刑判決になるかもしれないので嫌だな』などと考えるようになりました。
裁判員候補者名簿に記載された方々へ
最初に「最高裁判所長官からのごあいさつ」があり裁判員制度の意義が説明されてました。
はじめにお読みください。とのことで「裁判員候補者名簿に記載された方々へ」という資料があり、裁判員になれない理由がある場合や避けたい時期があれば「調査票」を提出するように記載されてました。
資料の最後に以下の文があり、インターネットに記載するのは違法だけど、家族や会社で話すのはOKだとわかりました。
選ばれると仕事にかなり影響があるので、この時点ですぐに直属の上司には連絡しました。
するとその上司も数年前に「裁判員候補者名簿への記載のお知らせ」が来たことがあったそうで、最後まで呼び出されることは無く期間が終わったとのこと。
【裁判員候補者名簿に記載されたことについて】
名簿に記載されたことについて、家族や会社の上司に話すことは問題ありません。
ただし、インターネットやSNS等で公表しないようにしてください(裁判員候補者のプライバシーや生活の平穏を守るため、裁判員候補者名簿に記載されたことを公にすることは法律上禁止されています。)。
上司の話を聞いて「裁判員候補者名簿への記載のお知らせ」が来ても実際に裁判員に選出される可能性はそれほど高くなさそうと感じました。裁判員については良く知りませんでしたが『実際に呼び出されたら調べればいいか』と思い、この時は送られてきた資料を読むだけで、裁判員について調べなかったです。
裁判員候補者名簿への記載のお知らせ
「裁判員候補者名簿への記載のお知らせ」の資料に「調査票」が付いてました。
最高裁からの封筒でしたが、これは横浜地方裁判所の資料だったので、実際に送ってるのは横浜地方裁判所ということなんでしょう。
調査票は「裁判員をできない事由があるか」とか「外してほしい時期はあるか」というような内容でした。
『特にできない理由は無いけど、外して欲しい時期ってあるかな?』と考えると、旅行の予定を立ててたことを思い出したので、2月と5月は「旅行の予定あり」という理由で辞退希望を記載して回答しました。
『会社に言うと忙しいから辞退して欲しいと言われたりしないかな』とも考えましたが、調べると基本的に仕事が忙しいからという理由では辞退はできないようでした。よく考えると、この理由が通るのであれば、裁判員は暇な人ばかりになりそうです。笑
裁判員選任手続期日のお知らせ
裁判員選任手続期日のお知らせの文面について
自分が裁判員候補者に選ばれていたこともすっかり忘れていた時に横浜地方裁判所から封書が届きました。その時は中身を見る前に『ついに来てしまったか。。』とピンときました。
しかし、、以前届いた「裁判員候補者名簿への記載のお知らせ」が前提となってるとは言え、説明が省かれていて、馴染みの無い裁判用語で書かれており、とてもわかりづらいですね。。
裁判員等選任手続期日のお知らせ
当裁判所で審理を行う刑事事件(令和4年第xx号)について、裁判員(及び補充裁判員)を選任する手続きを行いますので、令和5年xx月xx日 午前9時35分 当裁判所 裁判員候補者受付 までお越しください。
説明無しで突然「手続期日に裁判所に来てください」から始まるのは不親切すぎですね。。
『えっ?裁判員に選ばれたってこと?期日って何?単に裁判員候補全員に送ってる資料?』と、封筒に入ってた数枚の資料を何度か繰り返し読んで理解するまでにしばらく時間がかかりました。。
受け取る側は素人なので、たとえば以下のように冒頭に説明を少し書くなどでわかりやすくするように改善して欲しいものです。。
送付される資料の出だしの文章の改善案
「2022年11月に「裁判員候補者名簿への記載のお知らせ」をお送りしましたが、今回の書類を受け取った皆様は、刑事事件(令和4年第xx号)の裁判員裁判の裁判員候補者として選択されました。裁判員裁判の事前に裁判員候補者の皆様の中から裁判員を選任するための手続きを開催しますので、令和5年xx月xx日 午前9時35分 に当裁判所 裁判員候補者受付 までお越しください。」
この封書を受け取ったことで、いきなり裁判員に選出される確率が一気に高くなったので、慌てて裁判員について調べ始めました。
自分の場合は裁判員をやった経験について書かれてる記事を読んだり、裁判員について調べてるうちに『一生に一度あるか無いかのチャンスなので自分も裁判員をやってみたい!』と考えるようになりました。
スケジュール
※スケジュールは念のためモザイクなどで画像を加工してます。
★で書かれてる裁判員選任手続期日は平日で、その一週間後から〇が付いてます。〇が付いてるのは平日ばかり週3日で合計10日間でした。
ということは約1ヶ月の間、会社の仕事は週2日しかできないことになります。。
さらに運が悪いことに同じチームのメンバーが育児休暇を取得する時期と重なってたため、『仕事が忙しいので辞退するしかないかもなぁ』とも考えました。
しかし「裁判員になる確率について」に記載してますが、このチャンス(?)を逃すと一生裁判員になることは無いと思われます。連絡が来てすぐに上司に相談して『最悪、残業時間や土日出勤でカバーするので辞退はしない』という意思を伝えて、もし本当に裁判員が決まったら頑張って仕事の調整をする予定でした。
ちなみに調べると自分の会社では裁判員で裁判所に行く日については公休となり有給とのことで、会社としては裁判員に協力的だとわかりました。(まぁ、大きな会社なので毎年一定数は裁判員になってるはずなので、そこら辺はちゃんとしてるようです。)
自分の場合のスケジュールは10日間でしたが、ののさんの体験談ブログを見ると、6日間だったり約20日間だったりと、対象の事件によって日数が変わるようでした。
横浜地方裁判所
横浜地方裁判所は観光名所でもある横浜大さん橋の近くの日本大通りにあり、以前から存在は知ってました。当然入ったことは無かったので、中に入れるのは楽しみです。笑
質問票
質問表の資料は9ページもあるので面倒そうだなーと思ってましたが、いざ書き始めると問2で「辞退を希望しない」でいきなり終わりでした。笑
内容的には「裁判員候補者名簿への記載のお知らせ」の「調査票」を詳しくしたようなものですね。実際のスケジュールが決まったので改めて辞退するかどうかの確認です。
「辞退しない」のであれば必要なサポートや連絡手段、旅費の振込先を書いて返信用封筒で返信します。
お役立ちガイド
「お役立ちガイド」という資料が入っており、気になることなどの補足がされてました。
自分的に一番気になったのは日当ですね。笑
旅費は当然もらえると思ってましたが、結構いい日当が頂けるのはいいですね。
裁判員選任手続の当日
裁判員選任手続の実施内容
体験談をブログに書くつもりだったので、当日はノートを持って行っていろいろメモしてたんですがノートをどこにやったかわからなくなってしまい、、あやふやな記憶で書いてます。笑
当日は朝の9:35頃までに横浜地方裁判所に行く必要があります。
普段の仕事がテレワークなのと裁判所まで遠いことがあり、この日はいつもよりかなり早起きとなりました。
せっかくなのでどこかカフェで朝食を食べたいと思い、8:45頃にJR関内駅に到着。9:00頃にベローチェで速攻で朝食を食べ、9:20頃に横浜地方裁判所に到着しました。
横浜地方裁判所に入ると空港の入場ゲートと同じシステムで所持品のX線検査と全身の金属検査を行って「裁判員選任手続の方はこちら」のような看板に従ってエレベータで2階へ。
2階で受付の部屋で免許証を出して名前を確認して番号札と当日用の資料をもらって居室へ。
もらった番号札と同じ番号の席へ。席にはお茶のペットボトルがあったと思います。
全部で約20名。20代~60代くらい。30代~50代が大半でしょうか。男性の割合が少し多かったです。開始時刻までは自由ということで、皆静かにスマホ見たりトイレに行ったりして待ちます。
やる気満々なのは自分くらいで、全体的に『できればやりたくない』というオーラを感じました。笑
開始時刻になり簡単に今日のスケジュールが説明されました。
- DVD上映
- 事件概要の説明
- 当日用質問票の記入
- 裁判官・検察官・弁護人の入室・挨拶
- 裁判長からの質問
- 個別面談(必要な人のみ)
- 裁判員選任者発表
DVD上映
実は事前に調べた時に見た以下の動画とまったく同じものでした。
15分ですが1.5倍速なら10分くらいで見れて、わかりやすいので一度見るのをお勧めします。
事件概要の説明
あまり具体的な事件の内容は記載しませんが、「中年の方が同居の親と喧嘩して殺害した」というような内容でした。
(本当かどうかは不明ですが)裁判員裁判は面倒な事件をやるものだという噂を耳にしてたので、悲惨な内容だったり、犯人が死刑になるような事件の可能性もあると思ってたので、正直『それほど面倒な事件では無さそう』という印象でした。
通常の殺人事件であれば加害者の家族と被害者の家族がいて、それぞれの心情を知ってしまうと判断に影響が出そうと考えてました。今回のように加害者と被害者が同じ家族というのは、比較的楽では無いかと想像します。
ちなみに事件概要の説明では、場所やシチュエーションや凶器なども具体的に説明されてて悩むような事件では無さそうだったので、『どういう刑にするかを決めるだけなのでは?』『こんな事件で10日間も必要なのだろうか?』というのが少し疑問でした。
ネットで調べたところ1年以上前の事件のようでした。事件概要の説明では殺害したように話されてましたが、当時のニュースでは本人はやってないと否定しているとのことでした。
なるほど。本人はやってないと言ってて1年以上前の事件ということは、決定的な証拠が無いので有罪と断定できてないのでしょうか。判断は難しいけど、今ある証拠から有罪かどうかを判定して刑を決めるという案件なんでしょうね。たしかに面倒そう。
裁判員選任者の抽選の流れ
事件概要の説明を聞いた後、当日用質問票に自分が事件に関係があるかなどの回答を記載して回収されます。仕事で辞退しないといけなくなった場合や事件の内容を聞いて不安に思った場合なども当日用質問票に記載しておくと、後で個別面談をして辞退させてもらえるようです。
その後、裁判長、裁判官2名、検察官、弁護人それぞれ2名が入室し、一人づつ名前を言って挨拶されました。たしか裁判長から何番と何番の方はこの後個別に面談をすること、他に個別に話したい方はいないかの念押しと、それ以外の人は問題無いかの確認くらいをされたと思います。今回は3名の方が個別に面談をすることになり、一人づつ数分程度、別室で個別面談をされてました。
その場で抽選を行うのかと思ったら、一度、部屋から出て行って、しばらくしてからノートパソコンを持ってきました。たしか「これから抽選をします、画面に番号が出た方が選任者となります」というようなことを言って、ノートパソコンの画面に1つづつ番号が表示されたと思います。
もともと20名でおそらく3名は辞退だと思うので、補欠も合わせると選ばれる確率は8人/17人ということになります。約1/2。自分は最初からずっとやる気満々だったので、なぜか『絶対合格だろう!』と思ってましたが残念ながら不合格となりました。。笑
選ばれた6名+補欠2名は別室に移動。残った人はアンケートを書いて退出という感じで、選ばれなかった自分はここまででした。裁判所から外に出たのが 10:40頃だったので、全体としてここまで実質1時間程度でした。
いま自分は会社では幹部+社員3人のチームで10人程度の協力会社と一緒に仕事をしてますが、たまたまチームメンバーの育児休暇の期間と裁判員候補で選ばれた期間が重なってしまってました。
結局、裁判員は落選しましたが、チームメンバーの育児休暇で仕事量は1.5倍になり、ここ10年で一番忙しい状況になりました。既存の開発系の仕事をやりながら、今までやってなかった受発注とか損益周りの仕事を追加で期限付きでやらないといけない状況は精神的にも結構しんどかったです。。
この状況にプラスして裁判員にも選ばれていたら体力的にも精神的にももたなかっただろうとゾッとするので、選ばれなかったのは結果オーライだったとは思ってます。
ただ、確率的に裁判員候補に選ばれることは一生無いと思うので、今でも『やってみたかったなぁ』とは思ってます。
裁判員制度について考えたこと
上記までは実際に体験した内容でしたが、ここからは自分で調べたことや考えたことを書いておきます。
裁判員になるメリット・デメリットについて
自分も最初は『裁判員は面倒そうだからやりたくない』と思ってましたが、裁判員選任の通知が来て裁判員について調べていくうちに『裁判員をやってみたい』と考えるようになりました。
結果的に裁判員はやれなかったので実際にやると考えが変わるかもしれないですが、自分は裁判員をやるのは以下のようなメリットがあると考えます。
- 裁判に参加することができる(ただし裁判の傍聴であれば裁判員で無くても可能)
- 裁判員の当選確率は低いのでやりたくてもできないことを経験できる
- 裁判でどうやって有罪・無罪や量刑が決まるのかのプロセスを体験できる
- 裁判員の経験を人に話すことができる(ブログのネタにもできる)
- 日当が良いのでかなりの臨時収入になる
デメリットは以下だと考えます。
逆に言うとデメリットが解消できるなら裁判員にることはメリットの方が大きいと考えられます。
- 裁判員の期間は仕事に影響が出る
- 事件の内容が残虐な場合など精神的なダメージを受ける可能性がある
- 例えば死刑判決になる場合など判断に参加したことに責任を感じる可能性がある
- 守秘義務があるため情報を出しすぎると処罰される可能性がある
仕事の影響については会社によると思いますが、自分の会社の場合は協力的だったので大きな問題は無かったです。しかし一般的に一人抜けると回らない仕事ばかりだと思うので、ここがネックになる方が一番多いんだろうと思います。
2点目については、裁判員選任手続きの当日、事件の内容の説明を聞いた後で精神的に無理だと感じたら辞退が可能です。これがネックだと思う場合は裁判員選任手続きには行って、事件の内容を聞いてから決めれば良いでしょう。
自分が裁判員をやりたく無いと思う一番の理由は「責任を感じる」可能性があることでした。これがネックになる方も多いと思います。たとえ相手が犯罪者だとしても他人の人生に大きな影響を与えるわけなので「そんな責任は負いたくない」と思ってました。
これについては後で記載しますが、裁判が何をするものかを理解することで自分としては解消されました。
守秘義務についてもわかりづらいので後で記載します。
日当について
裁判員選任手続期日のちょうど1週間後に横浜地方裁判所から 6,141円 の振込がありました。詳細な計算はわからないですが、お役立ちガイドに以下の記載がありました。
- 旅費(交通費):最も経済的な経路・交通手段で計算されます。
- 日当:裁判員候補者:4,000円~5,000円程度をお支払いする予定です。
裁判員・補充裁判員:1日あたり10,100円以内でお支払いします。
実際に使った交通費は往復1,362円ですが最安ルートだと往復1,234円なので、日当は4,907円でしょうか。半端なのでおそらく交通費の計算がちょっと違うんでしょうが、概ね記載通りでした。
もし裁判員・補充裁判員に選定されていた場合、自分の場合は10日間だったので約10万円の日当を頂けたことになります。自分の会社では裁判員での休みは公休で有給になるし、休んだ分の仕事を残業でカバーすると考えると、少しまとまった臨時収入になりますね。
裁判とは何をするものかについて
裁判員制度のサイトで公開されている裁判員制度ナビゲーションはボリュームはありますが、全体について説明されており、これを一通り見るのが一番わかりやすいです。
裁判員裁判の対象は犯人がいる事件の刑事裁判ですが、刑事裁判が何をするかの自分の理解を簡単に書くと以下です。
- 検察官:事件について捜査を行い、集めた証拠や証人の証言に基づき、犯人と考える被告人を起訴する。
- 弁護人:被告人側に立ち、検察官からの起訴状と主張が違う部分があれば証拠や証人の証言を提示して争う。
- 裁判官および裁判員:検察官と弁護人の争点を確認し、それぞれの証拠や証人尋問により争点について判断を行い、有罪・無罪、量刑を決める。
今まで勘違いしてたことがありました。
裁判は、事件の真実を暴くものでは無く、あくまで証拠に基づいて判断するもの
裁判で事件の真実が暴けるとは限らず、あくまで、今ある証拠から判断するというものであるため、真実は有罪でも証拠が不十分であれば無罪となるし、真実は無罪でも証拠によっては有罪(冤罪)となる可能性もある、ということです。
真実は1つですが証拠の有無で判決は変わるということになります。
納得がいかないこともありますが、公平を期するには証拠で判断するしか無いわけです。
判決に納得がいかなければ、上告をして新たな証拠を出すしかないわけですね。
いかに証拠が大事かということですが、逆に言うと、悪いことをしても証拠が無ければ無罪となるわけなので、犯罪者にとってはいかに証拠を残さないかが大事かというわけですね。
ここであらためて裁判員が何をするかを考えてみると「証拠から判断する」ということになります。
証拠を基に判断するので、誰が裁判員をやったとしても結果は同じになるはずとも言えます。もちろん同じ証拠でも裁判員によっては見落としが出るかもしれないので、専門家の裁判官と共に行うことでカバーされるわけです。
誰が裁判員をやっても同じ結果になることなので、たとえそれが死刑宣告であったとしても責任を感じる必要は無いと気づきました。選ばれた人は手順に従って作業しただけで、誰がやっても死刑宣告は変わらないわけです。
そう気づくと今度は『裁判員は不要で裁判官だけで判断した方が効率がいいのではないか?』と考えましたが、裁判員裁判の目的はそこでは無いことがわかりました。これについては後に記載します。
これまで『裁判官は人の運命を決める仕事なので責任を感じて精神的につらくないのだろうか?』と考えてました。上記に気づいて、裁判官も法律や過去の事例からシステマチックに「証拠から判断する」仕事なので、本来はどの裁判官がやっても基本的には同じ結果になるはずで責任を感じる必要が無いのだと気づきました。
裁判官や弁護士は法律や過去の事例を覚えるのが大変だけど、やることはある意味作業なんだと気づくと、人為的なミスが少ないAIの得意分野だと考えました。最初にAIに法律や過去の事例や判断結果を出させて、それを基に裁判官が判断すれば裁判が短縮化できそうですね。
裁判員になる確率について
裁判員が選ばれるまで大きく3つの抽選があります。
- 毎年、有権者の中から裁判員候補者名簿に記載する人を抽選
- 裁判員裁判の案件毎に、裁判員候補者名簿の中から裁判員候補者を抽選
- 当日、集まった人の中から裁判員・補充裁判員を抽選
裁判員制度のサイトで公開されている「統計データ・資料集」の「裁判員施行~令和5年10月末・速報(PDF:503KB)」の資料の表4を見ると、令和4年の場合は以下のようです。
- 裁判員候補者名簿記載者数:23万3000人
- 選定された裁判員候補者数:8万5589人 ⇒ ①の36.7%の確率で選定
- 選定された裁判員・補充裁判員数:5940人 ⇒ ②の6.9%、①の2.5%の確率で選定
裁判員数:4413人
補充裁判員数:1527人
また、「裁判員選任手続パンフレット」の「裁判員裁判の日数等」の資料を見ると以下の記載があるので、令和4年の有権者数は(4413人+1527人)x17,700人=約1億513万8000人 ということになります。つまり、上記の①は有権者の 0.22% の確率で選定となります。
11年間で裁判員または補充裁判員になる確率は約17,700人に1人
「裁判員裁判の日数等」のページ(PDF:382KB)
※令和4年の場合
①の裁判員候補者名簿に記載されるのがたったの 0.22% なので毎年1人/450人の割合。
有権者でいられる期間の平均がザックリ50年とすると、生涯で候補者名簿に登録されるのは約9人に1人となるので、約9人の8人は生涯で候補者名簿に名前が載ることすら無いということになります。
さらに③の裁判員・補充裁判員に選定されるのは①の2.5%なので1人/40人。令和4年の数字で有権者の期間を50年とした場合であれば、生涯で裁判員・補充裁判員に選定されるのは約360人に1人ということになります。やりたくてもやれない貴重な体験と考えます。
ただ、上記は令和4年の数字だけで計算したもので、「裁判員裁判の日数等」の資料を見ると令和4年の裁判員裁判は 839件のようです。「裁判員施行~令和5年10月末・速報(PDF:503KB)」の資料の表1を見ると、過去には1800件近く実施している年もあるようです。とは言え減少傾向のように見えるので、今後増えるかは不明ですね。
裁判員選任者の抽選について
何人が招集されていたのかはわからないですが、今回、実際に裁判所に来てた人は20人でした。
さらにそこから事情などあれば辞退できるのと、裁判員制度の説明動画の7:25からあるように「検察官と弁護人がそれぞれ決められた人数まで理由を示さずに特定の候補者を裁判員に選ばないよう請求することもできる」とのこと。
自分が裁判官や検察官、弁護人の立場として考えるとわかりますが『この人が選ばれると場を乱して面倒なことになりそうだな』と思うような人がいた場合は外しておくべきなので、このルールは必要だと考えます。
ただ逆に、自分のようにやりたい人を優先で選ぶようなルールがあると良いと思いました。やりたくない人を選ぶよりやりたい人を選んだ方が実のある議論ができるし、やりたくない人の抽選確率が下がるので、やりたい人もやりたくない人も裁判官なども皆が win-win じゃないかと。
単純にやりたい人から選ぶのでは裁判員制度の目的から少しずれてしまうのかもしれないで、当日質問票で「やりたい」に〇をすると当選確率が2倍になるとかが良いと思います。
裁判員裁判の目的について
裁判員制度を導入した趣旨やアメリカの陪審員制度との違いなどは裁判員制度のサイトの「裁判員制度Q&A | 裁判員制度」の「制度趣旨・概要」がわかりやすいです。
一言でいうと,裁判の進め方やその内容に国民の視点,感覚が反映されていくことになる結果,裁判全体に対する国民の理解が深まり,司法が,より身近なものとして信頼も一層高まることが期待されています。
裁判員制度が導入されることで,どのようなことが期待されているのですか。
アメリカの陪審員制度では一般人から陪審員12人を選んで裁判官の助けは受けずに法廷の証言で有罪・無罪を決めるもので、有罪の場合の量刑は判事が決めるというもののようです。
日本の裁判員制度では一般人から裁判員6人を選んで裁判官3人と一緒に有罪・無罪および量刑を決めるというのが違いのようですね。
- 【解説】アメリカの陪審員制と日本の裁判員制について - スーパー!ドラマTV 海外ドラマ:LAW & ORDER
アメリカの陪審員の場合、法律に関係無く有罪・無罪を決めるのであれば通常の裁判と逆の結果になることもある(陪審による法の無視)そうなので、その場合は法律と市民の感覚が乖離してきていることがわかり、法律を見直すきっかけにもなりそうだと思いました。
日本の裁判員の場合は裁判官が入って行うので基本的に通常の裁判と結果は同じになるはず。裁判に対する国民の理解や司法への信頼向上が目的としており、法律と市民の感覚が乖離してないかを見つけることを目的としてないので当然と言えば当然ですね。
たまに『日本ではまだ法律が無いので罪を問えない』とか、海外では既に違法では無くなっているが『日本では法律が古いので違法となる』とか聞くことがありますが、たとえば裁判員全員が賛成であれば法律と乖離する結論を出せるなど、裁判員裁判でも法律を見直すきっかけになれる仕組みがあると良いと思いました。
裁判員裁判の目的としてわかりやすい裁判となることもあります。
これまでの裁判では専門家である裁判官、検察官、弁護人がやりとりするため、裁判を傍聴しても一般人にはわかりづらかったようです。
裁判員裁判では一般人である裁判員が理解できるようにわかりやすく議論されるので、わかりやすい裁判となることの目的については達成できているそうです。
裁判員制度の守秘義務について
裁判員裁判の目的が「裁判全体に対する国民の理解が深まり,司法が,より身近なものとして信頼も一層高まること」だとすると、裁判員になった人が自分の体験について広めるべきだと思いますが、これまで裁判員になった話を聞いたことがなかったし、インターネットで検索しても体験談はあまり多くは出てこないです。
裁判員・補充裁判員となった人は毎年約6000人も増加しており、「裁判員選任手続パンフレット」の「裁判員裁判の日数等」を見ると、裁判員として裁判に参加した後は実に96.3%が「非常によい経験と感じた」または「よい経験と感じた」と回答しているのに、自分の体験を広めようとしないのは、守秘義務が影響しているんだろうと思います。
守秘義務には大きく2つありますが、どちらも裁判員を守るためにあります。
① 裁判員や裁判員候補者であることを公にすることの禁止(裁判員法101条)
現在、裁判員や裁判員候補者であることを公にすると、事件関係者から接触があったり、知らない人から連絡があったりするので、裁判員や裁判員候補者を守るために禁止されてます。
過去になったことについては、本人が同意している場合は公にしても良いようです。
ちなみに、令和4年の裁判員候補者名簿記載者は23万人ですが、その中で裁判員・補充裁判員になるのがたったの2.5%だと聞くと、裁判員候補者名簿に記載されたことを公にするのを法律で禁止するのは少しやりすぎだとは思います。
② 「評議の秘密」と「職務上知り得た秘密」の守秘義務(裁判員法9条)
裁判員法9条はわかりづらいですが、裁判員制度ナビゲーションのP15に記載がありました。
- 守秘義務の対象
- 評議の秘密
- どのような過程を経て結論に達したか
- 裁判員や裁判官がどのような意見を述べたか
その意見を指示した数、反対した意見の数 - 評決の際の多数決の数
- 評議以外の職務上知った秘密
- 被害者など事件関係者のプライバシー
- 裁判員の名前
- 評議の秘密
- 守秘義務の対象外
- 公開の法廷で見聞きしたこと
- 証人尋問の内容
- 判決の内容
- 裁判員としての職務を行った感想
- 公開の法廷で見聞きしたこと
さらに本文中に以下の補足がありました。
このように裁判員に一定の守秘義務が課されているのは、裁判の公正さやその信頼を確保するとともに、評議で裁判員や裁判官が自由な意見を言えるようにするためです。もし、評議で述べた意見や経過が明らかになるとすれば、裁判員は後で批判されることを恐れて率直な意見を述べることができなくなってしまうでしょう。さらに、評議の秘密を守ることは、裁判員のプライバシーを保護するとともに、報復などの不安を抱くことを防ぐことにもつながるものです。
裁判員制度ナビゲーション
具体例が無いので、どこまでが守秘義務なのかわかりづらいですね。
間違ってるかもしれないですが、以下のパターンを考えてみました。
- 裁判員が終わった後で自分が「〇〇事件」の裁判員だったことをSNSやブログで公にする
⇒ 本人が書くのであれば問題ない。また、本人の同意があれば第三者が書いても問題ない。
⇒ ただし事件の関係者や報道関係からアクセスが来るなどのリスクがある。 - 事件は特定せずに裁判員として実施した内容の日記をブログなどで公開
⇒ 法廷での内容や裁判員の感想は書けるが、どのような意見が出たかや結論に至った経緯などは記載してはダメ。
⇒ 法廷での内容を書いて何の事件か特定されるとリスクが出て来る。逆に裁判員の感想だけだとブログとして弱い。
ブログやSNSを匿名で記載していれば「〇〇の事件の裁判員を行った」と書いても身バレすることは無さそうですが、おそらく本気で調べられると特定されてしまうので、どの事件だったかは書かないようにした方が良いでしょう。
ただ自分が思うのは「裁判員がどういう流れで議論するかやどうやって判決を決めるのか」などが一番知りたいところなので、ここを書けずに「裁判員をやって良かった」と書いても伝わらないだろうと思います。
「裁判員が後で批判されることを恐れて率直な意見を述べることができなくなってしまう」のが守りたいことだと思うので、たとえば以下のようにするのが良いと考えました。
- 自分が何の事件の裁判員をしたか、や、どの事件か推測できることは言ってはいけない
- 裁判員、裁判官、検察官、弁護人が誰か、や、誰か推測できることは言ってはいけない
現在は「公開の法廷で見聞きしたこと」は守秘義務の対象外なので、自分がどの事件の裁判員をやって法廷でどういう話が出たというのが言えてしまうと思うのですが、ここを変えてどの事件かを守秘義務の対象にすることで「評議の秘密」の守秘義務を緩和するのが良いと考えます。
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